「コーチって、教える人じゃないんですか?」
以前、保護者の方にそう聞かれたことがあります。もちろん、技術を伝えることはコーチの仕事の一部です。でも私が大切にしてきたのは、「教えること」よりも「気づかせること」でした。
答えを与えると、子どもは考えなくなる
試合中、ピンチになるとすぐにタイムアウトを取って指示を出すコーチがいます。気持ちはわかります。助けてあげたい。でもその瞬間、子どもたちの「考える機会」は奪われています。
私が新宿中学校でコーチをしていた2年間、意識していたのは「最後まで自分たちで解決させる」ことでした。負けている場面でも、すぐには動かない。子どもたちが何を感じ、何を試みているかを、まず見守る。
最初はもどかしかった。でも徐々に変わっていきました。ハーフタイムに自分たちで課題を話し合うようになり、練習中に「あのプレー、なんでうまくいったんだろう」と考える声が増えていきました。
財務の仕事で学んだ「構造的思考」との共通点
私はバスケのコーチになる前、上場企業で財務経理の仕事をしていました。数字を読み、経営の意思決定を支援する仕事です。
財務の世界でも、答えをすぐに出すことが正解とは限りません。「なぜこの数字になっているのか」「この先どうなるか」を自分で考え、仮説を立て、検証する。その思考プロセスこそが価値を生む。
バスケの指導も同じだと気づきました。大切なのは「正解を教える」ことではなく、「考えるための枠組みを渡す」こと。
見守る力とは、信じる力である
「教えない指導」は、放任とは違います。子どもたちをよく観察し、適切なタイミングで問いを投げかける。「今のプレー、なんでそうしたの?」「次同じ場面が来たらどうする?」
答えを出すのは、いつも子ども自身です。
それができるのは、「この子たちは自分で考えられる」という信頼があるからです。見守る力の本質は、信じる力だと思っています。
現在は千葉ジェッツスクールのコーチとして、引き続きこの哲学を実践しています。子どもたちが自ら考え、仲間と連携し、成長していく姿を、これからも見守り続けていきます。
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